美容医療-HOW TO-Vol.1 クリニック経営を支える「補助金・助成金」活用ガイド

“補助金で攻める経営戦略”——それは今、クリニック経営者に求められる新たな視点です。

自由診療やIT導入が進む医療・美容業界において、補助金や助成金の活用は、資金調達や経営改善の助力となります。


本コラムは、厚生労働省保険局での政策経験を持ち、中小企業診断士として17年以上にわたり現場支援を行ってきた、株式会社SSFホールディングス取締役・廣瀬雄志氏の監修のもと、クリニック経営に活かせる補助金・助成金の活用法をわかりやすく解説。

クリニック経営者が知っておきたい補助金・助成金の基礎知識から、申請時の注意点、活用事例までを紹介します。

1. 補助金と助成金の違いとは?

補助金と助成金は、いずれも国や地方自治体から支給される返済不要の資金であり、事業者にとって重要な支援制度です。しかし、その目的や申請条件、支給方法には明確な違いがあります。

補助金とは

主に設備投資やシステム開発などの事業の拡大を支援する目的で支給される資金です。事業を支援するものという認識。経済産業省や地方自治体が管轄し、申請には詳細な事業計画を書き、事業計画が採択されると支給されます。

助成金とは

一方助成金は、主に雇用の安定や職場環境の改善、教育訓練などを目的として支給される資金です。厚生労働省や労働局、地方自治体などが管轄しており、所定の要件を満たせば原則として受給可能です。

医療法人は補助金の対象外となる場合が多いですが、助成金は幅広く対象となります。個人クリニックや自由診療を行う事業者でも、要件にフィットしていれば活用可能な制度があります。

2. 補助金・助成金の活用メリット

  • 資金調達効率が高い
  • 経営改善・業務効率化・事業成長のきっかけになる

    例えば500万円の補助金・助成金を受け取る場合、同額の営業利益を得るためには、相応の売上が必要となります。このように、補助金や助成金は、売上を大幅に増加させることなく、同等の利益を確保できるため、資金調達の効率が非常に高く、事業成長のきっかけをつかみやすくなります。

3. 申請の際に気をつけるべきポイント

申請を成功させるためには、次の点が重要です。

目的に合った制度を選ぶ

補助金や助成金は、それぞれ異なる目的や要件があります。制度の趣旨を理解し、自社の事業計画や目的に合致するものを選択することが重要です。補助金ありきで事業を考えるのではなく、事業の目的達成のために補助金を活用する姿勢が、採択の可能性を高めます。

また、不正受給や虚偽申請はペナルティが科されます。制度を正しく理解し、適切な申請を行うことが求められます。

体制整備(資金繰りや報告体制)を事前に整える

補助金は原則として後払い(清算払い)であり、事業実施後に支給されます。そのため、事前に必要な資金を確保し、資金繰りを計画的に行うことが必要です。

事業終了後3~5年間にわたり、定点報告を行う必要がある制度も存在します。専門家や、そういったことができる人材を確保しておくことが重要といえます。

事業者自身が主体となって申請する

申請は事業者自身が行うことが原則です。支援者の助言を受けることは可能ですが、申請手続きを他者に任せることはできません。事業者自身が制度を理解し、主体的に申請を行うことが必要です。

補助金や助成金の申請は一見複雑に感じられるかもしれませんが、基本を押さえ、適切な準備と情報収集を行えば、対応可能です。制度の趣旨を理解し、自社の事業計画に合致するものを選択し、正確な申請と報告を行うことで、補助金や助成金を効果的に活用することができます。

 

4. 補助金・助成金のスケジュールと資金計画

補助金は通常事業完了後に報告を行い、書類に不備が無ければ2か月程度で入金されます。

ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 補助金は一度全額立て替える必要あり(後払い)
  • 助成率は「1/2」「2/3」などのため、一部負担が必要

補助金は補助率が「1/2」や「2/3」などと定められているため、補助金で賄えない部分の資金も準備しなければなりません。

:1,500万円の事業で補助率が2/3の場合、1,000万円が補助金として支給され、残りの500万円は自己負担となります。

さらに、補助金の入金までの期間も考慮し、資金繰りを計画的に行うことが重要です。

5. 相談・申請サポートが受けられる機関

不明点がある場合や申請をサポートしてほしい場合は、以下の機関で確認、相談できます。

  • 中小企業基盤整備機構
  • 商工会・商工会議所
  • 東京都中小企業振興公社
  • 経営革新等支援機関(税理士・中小企業診断士など)

6. 補助金・助成金を活用したい場面別・制度例

活用場面 対応可能な補助金・助成金
電子カルテ導入等 IT導入補助金
スタッフ教育・待遇改善 キャリアアップ助成金、特定訓練助成金
新規開業 創業助成金
アートメイクスクール運営 雇用調整助成金、職業訓練系の助成金
省人化・業務効率化 省力化補助金、ものづくり補助金

7.申請までの事前準備

申請期間の短さに注意

多くの補助金・助成金は申請期間が短く、わずか1カ月程度の場合もあります。そのため、情報収集を怠ると、気づかないうちに申請期間が終了してしまうこともあります。

補助金・助成金の電子申請には、デジタル庁が提供する「GビズID」が必要です。特に「GビズIDプライム」は、申請から発行までに原則2週間程度かかるため、早めの取得をおすすめします。

「どの補助金が自社に適しているか分からない」といった場合は、早めに専門機関や支援機関に相談しましょう。申請準備には時間がかかるため、思い立ったらすぐに行動を開始し、スケジュールを立てることが成功への鍵となります。

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