近年、美容医療は急速に発展を遂げていますが、それに伴い消費者からの不満やトラブルも増加しています。
こうした状況を踏まえ、国は美容医療の安全性を確保するための新たな法律を、来年以降、段階的に施行する予定です。
本コラムは、美容医療に特化した弁護士であり、現在は株式会社SSFホールディングス取締役CLOを務める新城安太氏の監修のもと、美容クリニック経営者が今から知っておくべき、新たな法律の内容とその影響を解説します。
1. 医療法改正の目玉:美容医療提供機関への「報告義務」
今回の法改正で最も注目すべきは、美容医療を提供しているすべてのクリニックに対して、年に一度、行政への報告義務が課せられる点です。
この報告には、以下の内容が含まれる見込みです。
- 安全管理体制: クリニック内で安全性をどう担保しているか
- 相談窓口の状況: 相談件数やその内容
- 麻酔などの体制: 緊急時の対応体制
- 所属医師の情報: 専門医の有無や人数
これまでも医療法人には報告義務がありましたが、今後は個人クリニックを含め、すべての美容医療提供機関が対象となります。これにより、行政はクリニックの安全性を把握しやすくなります。
将来的には、これらの情報が一般公開され、消費者がクリニックを選ぶ際の判断材料になる可能性も指摘されています。
2. 消費者保護を強化する「説明責任」の厳格化
新たな法律では、クリニックの「説明責任」がより厳格になります。
これは、トラブルの多くがカウンセリング時の説明不足や、即日契約を迫るような圧力的な勧誘によって引き起こされているためです。
- リスク・副作用の説明: 口頭だけではなく、書面を用いてリスクや副作用を丁寧に説明し、患者様から確認の署名をもらうことが求められます。
- 検討期間の確保: 「今やらないと損をする」といった焦りを煽るような契約は、今後通用しなくなる可能性があります。
これにより、クリニック側は、患者様が十分に検討できる時間を確保することが、法律上の義務となります。
3. 今からできること:専門家への早期相談
新たな法律の内容やフォーマットはまだ確定していませんが、いつ施行されても対応できるよう、今から準備を始めることが重要です。
- 最新情報のキャッチアップ: 法律の専門家や信頼できるコンサルタントから、最新情報を入手し、施行スケジュールを把握しておきましょう。
- 書面によるエビデンス確保: 患者様への説明内容を、書面で残し、署名をもらう習慣を徹底しましょう。
今回の法改正は、美容医療業界全体の安全性を高めるための動きです。
適切な準備を怠ると、税務調査と同様に、行政による立ち入り検査などの対象となるリスクも考えられます。
弊社の専門スタッフは美容医療に精通しており、常に法改正の動向をキャッチアップしています。
新たな法律への対応やクリニックでの対応にご不安がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。







